「総合型地域スポーツクラブ」の「総合型」とは、3件の多様性を包含している事を指し、
種目の多様性 |
性別/世代/年齢の多様性 |
技術レベルの多様性 |
の3要素で、特徴を挙げると以下の様になります。
@ 限定されたスポーツ種目だけではなく、複数の種目が提供される。
A 地域住民の皆さんの誰もが集い、夫々が「年齢」・「興味/関心」・「体力」・「技術/技能レベル」等に応じて活動できる。
B 活動拠点となるスポーツ施設を持ち定期的・継続的な活動を行なう事が出来る。
C 質の高い指導者がいて、個々のスポーツニーズに応じた指導が行われる。
D スポーツ活動のみならず、文化的活動も準備されている。 |
総合型地域スポーツクラブ論の背景 |
従って、「地域」とは一般的に拠点となる施設を中心として、会員が自転車等で無理なく日常的に集うことの出来る範囲になると思います。この為に、新しい「施設(ハード)」を策定するのではなく、元来地域に密着したスポーツ施設を如何に有効利用するかが課題となります。これには、公立・民間を問わず互いのネットワークの中で、施設を有効に地域住民に開放する事を協力し合う「ソフト」が大切になります。
総合型地域スポーツクラブとは、このような「地域」における「総合型」のスポーツクラブです。誰もが行ないたいスポーツを自由に選択できると共に、各種のイベントなど色々な形で楽しむ事の出来る身近な場所です。言い換えると、内輪で楽しむ「利益」ではなく、地域住民に開かれた「公益」を目指した、経営意識を有する「非営利組織」です。
要するに、クラブ育成には次のような基本認識で取り組むことが必要になると思います。
@ 自主的な運営
A 自主財源を主とする運営
B クラブとしての理念の共有
我が国では、これまで経済中心型の社会から成熟した市民社会への転換を図る為、従来からの行政主導型システムを見直す動きが活発になっています。
この事はスポーツにおいても例外ではありません。学校・スポーツ団体・企業・行政に多くを依存してきたシステムを、住民一人一人がスポーツ文化を夫々の地域の中でどの様に育て、日常生活の中に定着させていくかを支援するシステムに転換していく事が求められています。この考えは、現在NPO(非営利組織団体)設立への活性という事で、多方面において戦略的に展開されている考え方でもあります。
又、個人においてみた場合、自由時間やゆとりを住民一人一人が主体的に活用し、文化としてのスポーツに理解を深め、夫々のライフステージにおいて継続的にスポーツを楽しむ主体性の確立が求められていると言えます。
こうした意味での総合型地域スポーツクラブの設立・育成は、地域におけるスポーツ行政・スポーツ団体の在り方を含め、これからの地域スポーツ振興の仕組みの改革であると言えます。
このような背景の中で、2000年9月に文部科学省は「スポーツ振興基本計画」を策定しました。この基本計画では、生涯スポーツに関する政策目標として、次の事が掲げられています。
@ 生涯スポーツ社会の実現。
A 成人の週1回以上のスポーツ実施率が2人に1人になることを目指す。
そして、これを実現する為の具体的な施策展開として、計画期間の2010年までの10年間に全国の各区市町村において、少なくとも1つは総合型地域スポーツクラブを育成する事(現状、北区では2010年までに、廃校跡地利用を掲げた「北園スポーツクラブ」の1箇所しか考えていないことが、平成17年3月25日発行の「北区ニュース」から読み取れる)、更に、総合型地域スポーツクラブの運営や活動を支援する広域スポーツセンター(既に、十条台地域クラブでは、平成16年度から東京都広域SCより活動支援を受けている)を各都道府県において少なくとも1箇所は育成する事としています。
このような基本計画では、地域住民が主体的に運営する「総合型地域スポーツクラブ」の育成が、生涯スポーツ社会を実現する上での最重要施策であるとしています。
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地域スポーツクラブの育成 |
平成12年に、東京都スポーツ振興審議会は、東京都教育委員会により策定される「東京スポーツビジョン」に盛り込むべきものとして、21世紀の新たなスポーツ振興体制の在り方について、その構築方法など具体的方策をまとめました。
その理念は、
スポーツの持つ社会的・教育的効用を最大限に活かし、青少年対策のみならず「東京の再生」に貢献することが最大の命題であり、そのためには「地域スポーツクラブ」が不可欠である。 |
として、その構築と具体的展開について述べています。
21世紀のスポーツ振興は、区の体育施設を拠点にスポーツサービスを提供する「総合型地域スポーツクラブ」と学校施設を拠点とした住民管理による「(学校における)地域スポーツクラブ」とが、連携してそれぞれの役割を果たし、地域社会の中で豊かに機能していくことが重要であるとしています。
この審議会のまとめは、スポーツを
「人々の快適な生活、豊かな人生に欠くことのできない文化の一つであり、人々が求める期待は、いつの時代も変わることのないものである」
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と明確に位置付け、 |
「都が進めている人づくり、町づくりの政策の中に、スポーツ振興を明確に位置付け、教育行政は元より全庁的な取り組みとして展開されることを期待するものである。」 |
とスポーツ行政の積極的な対応を求めています。
前記に示した、学校を拠点とする「地域スポーツクラブ」について、その設立・育成のステップ例を紹介してみます。
【ステップ1】 |
「校内スポーツクラブ」の設置 |
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最初は設置しやすいように、在校生を対象に、学校管理外でのクラブを校内に作る。活動内容は生徒の需要に合わせ、ニュースポーツ志向なども含め柔軟に取り入れる。指導者は、種目団体の協力をはじめ、地域スポーツ指導者やOB、希望する教員(地域指導者として)等によって構成される。 |
【ステップ2】 |
「青少年スポーツクラブ」に拡大 |
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クラブの構成員は在校生に止まらず、隣接校・異校種など、他校の児童・生徒の参加を認め、対象範囲を拡大していく。活動内容は需要に応じて増やしていき、校外や公共体育施設など学校外にも活動場所を求めていく。また、校内にクラブハウスを有して組織的なクラブ運営をしていく。
なお、学校によっては、ステップ2から始めることも可能である。 |
上記について現実の凡例として、「十条台地域クラブ」が平成15年度に設立を模索した際、拠点となる学校に対して、この「校内スポーツクラブ(学校管理外)」・「青少年スポーツクラブ」の立ち上げを試みましたが、理念の理解がされないこと、学校施設の開放に向けて極めて消極的であったこと、教員の参加には断固として拒否の姿勢が示されたことが挙げられます。
打開する方策として、北区教育ビジョンに掲げられた「学校ファミリー構想」に即して、単一校へのアプローチではなく、十条台エリアを中心とする、十条中学を核としたサブファミリー(王子第二小・十条台小・荒川小)に対し提言することとし、先ず、各学校において「生徒の需要」を知るためのアンケートをお願いし実施しました。その結果を踏まえ、行政が行なっている校庭開放制度を利用し、それとタイアップする形で、在校生・児童に対し「需要の提案」をする方策として体育館施設開放も含め、各校の理解を求めることにしました。その結果、「場」としての施設開放 及び 各校での在校生・児童への活動告知の協力は認められましたが、最後まで教員の関わりについては拒否の姿勢を崩せませんでした。
又、小学校の学校体育及び中学校の部活動との相関関係を意識した、トータルな文化・スポーツ提言とは理解され難く、外部の任意者が勝手に活動する「祭りの夜店」的な感覚に捉えられてしまったことは残念ながら否めませんでした。この背景としては、文部科学省・東京都教育庁が提言した、地域スポーツに対する考え方が、学校現場に周知されていない現実があると思います。北区ではこの点が、学校施設を地域に開放する事務的な手段・方策の術として捉えられているだけで、中味の議論・現状の把握が全く乏しいことに空しさを覚えます。
特に、拠点となるべき「クラブハウス」の設置は、現状の学校施設ではセキュリティ面なども含め設置する事は難しく、実態をソフト中心の活動に重きを置いていく内容で対応せざるを得ないのが現実と言えます。
【ステップ3】 |
「地域スポーツクラブ」に発展 |
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青少年に止まらず、すべての地域住民の参加を可能にし、学校施設・設備や構成員のニーズに応じた活動内容や組織規模になっていく。また、クラブマネージャーを中心に、より組織的なクラブとして自立し、他の「地域スポーツクラブ」とのネットワークも豊かにしていく。
運動部活動はいずれ、クラブと合流することも検討されるべきである。 |
考察として、学校拠点という点では、以下が挙げられると思います。
・ 学校と地域の具体的関係(PTA活動は除く)を明確にさせること。
・ 時間配分・占有を明確にさせること。
・ 教育委員会ルールではなく、地域自治のルールに学校を位置付けて、「教育課程時間外」の時間であることを明確にする。
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総合型地域スポーツクラブを育成するメリットって何? |
総合型地域スポーツクラブの目指すものは、従来のチームつくりの為のクラブではなく、豊かなスポーツライフ創造の為のクラブ、ひいては地域のコミュニティの核としてのクラブです。その機能には競技力向上の為のスポーツ活動は勿論のこと、交流志向などの多彩なものが含まれます。
従って、総合型地域スポーツクラブの育成は、スポーツ振興のみならず、社会環境が変化する中での、
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@ 地域における住民意識や連帯感の高揚 |
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A 世代間の交流 |
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B 高齢化社会への対応 |
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C 地域住民の健康・体力の保持増進 |
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D 地域の教育力の回復 |
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E 学校運動部活動と地域との連携 |
等々、21世紀における新たな地域社会の形成にも寄与する事が期待できます。
これらの中で教育委員会が関わるDEについての北区での現状は、各学校に対し 「特色ある教育環境の構築」 の名の元に、学校側の対応に丸投げをしているのが実態で、地域住民から見ると行政の無策としか受け取れない現実があります。
加えて、総合型地域スポーツクラブを育成していく最大のメリットは、誰もが気軽にスポーツに親しめる生涯スポーツ社会の実現ですが、以下のような社会的メリットも期待できます。
◆ スポーツ文化の醸成 (スポーツが生活の一部としてスポーツ実施率の向上)
◆ 青少年の健全育成 (生涯学習)
◆ 地域教育力の回復 (生涯学習)
◆ 地域のコミュニティ形成による地域の活性化 (まちづくり公社)
◆ 親子や家族の交流 (子育て支援)
◆ 世代間交流の促進 (子育て支援)
◆ スポーツ施設の有効活用
◆ 地域の健康水準の改善によって医療費の軽減 (健康福祉)
◆ 高齢者の生き甲斐作り (健康福祉)
これらの社会的メリットを最大限に活かす為には、行政と地域との協働は勿論のこと、区行政内の全庁的な連携・取り組みが必要で、現状の縦割り行政では対応し難い体質の改善が求められると思います。
これらの事を、我が北区でも真剣に考える時期が来たのではないでしょうか。
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